狐は豚に貢ぎたい

露文徒の雑記

C・ブロンテ『ジェイン・エア』について

またしてもイギリス文学からシャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』(原題:Jane Eyre, 1847)です。

これも英文科のお友達に紹介されたので読んでみましたが、『ダーバヴィル家のテス』と比べたらハッピーエンドですし、そんなに暗い話じゃなくてよかったです。

最初はカラー・ベルという男性の筆名で発表されていたそうです。

あらすじ

主人公ジェインは孤児で叔母のミセス・リードに育てられていました。しかし、そこではミセス・リードの息子のジョンやその妹たちにいじめられたり、ミセス・リードからも酷い扱いを受けていました。

ジェインは癇癪持ちで時々手のつけられないほど暴れたのでロー・ウッド養育院という寄宿学校に入れられます。

そこでヘレン・バーンズという友達ができ、テンプル先生という優しい先生にも出逢いますが、ヘレンは肺病ですぐに亡くなってしまいます。

ジェインはそこで、生徒として六年間フランス語や絵やさまざまな教養を身につけ、その後二年間教師として働きました。

しかし、尊敬していたテンプル先生が結婚して辞めることになったのでジェインも思い切って広告を出してソーンフィールド邸というところで住み込みの家庭教師をすることにしました。

そこでジェインはアデルというフランス人の少女の家庭教師として働くことになりました。

そこの主人のエドワード・ロチェスターは頻繁に海外に行くなどして屋敷にいないことが多く、ジェインも最初の数週間は会うことはありませんでした。ある時街に手紙を出しに行く途中で馬に乗った男を転倒させてしまいますが、実はそれはソーンフィールド邸の主人ロチェスターでした。

ロチェスターはそんな男前ではないと書いてありますが、その後屋敷で度々会うようになり、どういうわけかジェインは段々とロチェスターに惹かれるようになります。

ある日ジェインは夜中に人気を感じ、起きると恐ろしい女の笑い声が聞こえ、廊下に出て声のほうに向かうとロチェスターの寝室が燃えてるのを発見します。

ジェインはロチェスターを起こし、火を消し止めますが、ロチェスターは何者の仕業か隠蔽してしまいます。

ロチェスターはジェインと違って裕福なので上流階級の人たちと交流があり、良家の令嬢とも仲が良く、それを見たジェインは嫉妬します。

ある時ロチェスターが多くの上流階級の人たちを屋敷に呼ぶことになりました。その人たちは数週間滞在する予定でジェインも毎日話に加わるようロチェスターに言われましたが、身分の違いを思い知らされ苦しみます。

そんなある時ロチェスターの旧友で西インド諸島から来たメイスンという男がソーンフィールド邸を訪れますが、夜中に何者かに刺されて死にかけてしまいます。なんとか一命を取り留めましたが、またもやロチェスターが事件を隠蔽してしまいます。

そんな中ジェインはミセス・リードが病気になり、息子のジョンが家の金を散々使い込んだ挙句死んだという知らせを受け、ミセス・リードの元を訪れます。

そこでジェインは自分には叔父がいて、その人が自分に遺産を相続しようとしていることを知りました。それを告げた後、ミセス・リードは死に、その家にはもはや財産は残っていなかったので、残された2人の娘は家を出ました。

ソーンフィールド邸に帰ったジェインは、ロチェスターが良家の令嬢と結婚しようとしていることを知ります。その場合、アデルは寄宿学校にやられるので、自分はお役御免となり家を出ていかなければならないのでロチェスターと会えなくなることを悲しみました。

しかし、結婚するという話はロチェスターがジェインを嫉妬させるために仕組んだものであり、2人は共に思いを打ち明け、結婚することになります。

結婚当日教会で牧師が結婚に意義を唱える者はいないかと尋ねるとメイスンとその弁護士が現れ、ロチェスターはすでに結婚しおり、妻が今もソーンフィールド邸にいるため、この結婚は不当であると訴えた。

実はロチェスターは10年前にメイスンの妹と結婚しており、そのことをずっと隠してきていました。その妻というのは気が狂っており、普段は誰にも知られないように塔に閉じ込めているがたまに脱走してロチェスターを焼き殺そうとしたりしているのでした。

それを知ったジェインはソーンフィールド邸を逃げ出し、馬車代で全財産使い果たし、三日間飲まず食わずで彷徨い死にそうになります。そんな時セント=ジョンという教区牧師に救われます。セント=ジョンには、ダイアナとメアリという2人の妹がおり、とても教養が高くジェインとも気が合いました。

ジェインとセント=ジョン、ダイアナ、メアリは数週間共に過ごし、打ち解けあったが、金がなく働かなければならなくなったため、ダイアナ、メアリはそれぞれ住み込みの家庭教師となることになり、ジェインは学校の先生となりました。

ジェインはセント=ジョンたちにずっと身の上を隠していたのでジェイン・エリオットという偽名を使っていたが、ついにセント=ジョンに素性がバレてしまいます。

ジェインは長い間捜索されていたが、その理由はジェインの叔父がジェインに2万ポンドの遺産を残して亡くなったからであった、

そして、実はセント=ジョンたちはジェインの従兄弟であるということが判明し、その遺産は4人で分け合い、再び4人で暮らすこととなります。

セント=ジョンは宣教師としてインドに行く計画を立てていたが、ある日ジェインに妻として一緒に来るように頼み始めます。

しかし、ジェインはセント=ジョンが自分を愛してはいないことを知っていたので、結婚を断り、ロチェスターに再び会うため、ソーンフィールドに向かいます。

しかし、ソーンフィールドは廃墟になっており、そこには誰もいませんでした。

近くの宿屋で事情を聞くと、数ヶ月前にロチェスターの妻により火が放たれ、妻は転落して死に、ロチェスターは左腕を失い、失明し、今はファーンディーンにいるということがわかります。

ジェインはすぐに会いに行き、2人は再び愛し合い結婚することとなりました。

今ではダイアナ、メアリもそれぞれ結婚し、セント=ジョンはインドで宣教師としてまもなく死を迎えようとしています。

C・ブロンテについて

この作品はC・ブロンテの自伝的な要素が強いそうなのでC・ブロンテについても書いておこうと思います。

C・ブロンテは牧師の娘で、他に4人の姉妹と1人の弟がいます。

中でも三女のシャーロット、四女のエミリー、五女のアンの3人は小説家でブロンテ三姉妹と呼ばれています。エミリーの代表作が『嵐が丘』でアンが『アグネス・グレイ』です。下に行くほど暗い話になるそうです笑

 

この時代女性作家自体が珍しかったので一つの家から3人も女性作家が出ているのはすごいことらしいんですけど、どうやら牧師の家だと本がたくさんあるので小さい頃から文学に触れることができるっていうのが関係あるらしいです。

 

5歳の時に母が癌で亡くなり、長女と次女はシャーロットが9歳の時に肺病で亡くなっており、ヘレン・バーンズのモデルは長女のマリアだと言われています。

通っていた学校も先生も実在のモデルがいるそうです。

また、シャーロット自身もジェイン同様寄宿学校で学び、教師として2年働らき、住み込みの家庭教師(governess)として働いています。

 

この家族は総じて短命でシャーロットが32歳の時に弟のブラウンが亡くなり、33歳の時に妹のアンが亡くなり、シャーロット自身も38歳で死去しています。

感想・考察

ジェイン・エアという人間の半生を描いた教養小説で、ジェインの回想によって語られるという話なんですけど、もう少し語りが客観性な視点であればトルストイとかにもありそうな作品かなという感じはしました。

ヴィクトリア朝にしては暗すぎず、ハッピーエンドでよかったです。この時代に自立した活発な女性を描いたというのもポイントかもしれません。

ジェンダー系の話はもう疲れたので今回はしませんが、そういう議論も所々で出てきていかにも女性作家の作品という感じはしました。

 

ロチェスターが最後不自由な体になるんですけど、それでも幸せになれるっていうメロドラマ的な要素は酒井法子の「星の金貨」ってドラマを思い出しました。あれも最後の方で相手役の竹野内豊が事故で半身不随になったり、大沢たかおが死んだりするんですけど、ああいう「冬のソナタ」的な不幸が起きる恋愛ドラマはたまにやると流行るっていうのがテクニカル的に確定済みなのでC・ブロンテよくわかってるな!って思いました。

風景描写もすごく綺麗でイギリスの田舎にまた行きたくなりました。最後の方ヒースっていう植物の名前がよく出てくるんですけど、あれは今調べたところによるとイギリス北部の荒地にしか生えてないらしいです。そういうのも知ってるとより面白いかもですね。

 

一つだけ気になったのがフランス人の扱いですね。アデルとかアデルの母親の話とかでフランス人に対するあまり良くない評価が出てくるんですけど、一方でこれはロシアでもそうですけど上流階級の人とか教養ある人はみんなフランス語を使うんですよね〜。フランスのこと好きなのか嫌いなのかよくわからないですよね笑

 

自伝的な話と組み合わせて面白い小説に仕上げたC・ブロンテ、あっぱれです。

 

 

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