狐は豚に貢ぎたい

露文徒の雑記

プーシキン『スペードの女王』について

スペードの女王』(Пикавая дама)はプーシキンの短編小説で1834年に雑誌『読書文庫』で発表されました。

これも『青銅の騎士』みたいなペテルブルグを舞台にした幻想的な話です。

あらすじ

工兵士官の主人公ゲルマンはいつも周りの士官たちがギャンブルをしているのを見ているだけで決してそれに加わろうとはしません。

しかし、ゲルマンはナポレオン並みの野心家で大金を手にする機会をずっと探していました。

ある時知り合いの士官からとある公爵夫人の話を耳にします。その公爵夫人はかつてギャンブル好きで大金を溶かしていましたが、ある人から必勝の札を教えてもらったことで大金を手にしその後金を賭けることは無くなりました。

それを聞いたゲルマンは三枚の勝ち札の話に興味を持ち、街を彷徨い歩いているといつの間にかその公爵夫人の屋敷の前に来ていました。

それからはゲルマンはその屋敷に住むリザヴェータという娘を誘惑し、屋敷に忍び込む機会を得ます。

そこでゲルマンは公爵夫人の部屋に忍び込み3枚の勝ち札を教えるように銃を突きつけ脅しますが、公爵夫人は突然死んでしまいます。

しかし、後にゲルマンの部屋に公爵夫人の幽霊が現れ、「3」「7」「1」の順で賭ければ必ず勝てると告げます。

ゲルマンは実際にその通りに賭けていき2回勝ちますが3回目も勝ったと思った時相手に君の負けだと言われ、手に持ったカードを見てみるとそれは賭けたはずの「1」ではなく「女王」でした。すると「女王」のカードの絵柄はたちまち公爵夫人の顔になり微笑みます。

ゲルマンは錯乱状態になり、精神病院に入れられ、「3(トロイカ)」「7(セミヨルカ)」「1(トウズ)」、「3(トロイカ)」「7(セミヨルカ)」「女王(ダーマ)」と繰り返しつぶやくだけになりました。

 

感想

最初は普通だったゲルマンがリザヴェータを誘惑するために毎日屋敷の外に立ってたり無限に手紙を送り続けたりだんだん狂気に包まれていく過程が面白いです。死んだ公爵夫人の死体がこっち見てきたり幽霊出てきたりホラーテイストなプーシキン作品とてもいいです。

本読んだだけだとゲームのルールが良くわからなかったんですけどアマゾンプライムに映画があったのでそれ見たらやっと理解できました。

ドストエフスキーの『賭博者』とかありますけど、ロシア文学って結構ギャンブルの描写多くて貴族や士官の主な娯楽の一つだったんだなぁって思いました。

あと「いやいや、倹約、節制、勤勉、これが俺の三枚の勝ち札だ。これこそ俺の身代を築き上げるどころか七層倍にもして、安楽と独立を齎すものなのだ。」っていうセリフはすごく印象的です。僕も倹約、節制、勤勉を3枚の勝ち札にしていきたいです。

 

 

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