狐は豚に貢ぎたい

露文徒の雑記

レールモントフ「現代の英雄」について

1840年ミハイル・ユーリエヴィチ・レールモントフが発表した小説「現代の英雄」(原題:Герой нашего времени)についてここにメモっておきます。(いつか僕がレポートで使うかもしれないので)

この作品は、雑誌「祖国雑記」に別々に掲載された五つの話が長編小説としてまとめられたものです。

 

簡単なあらすじ

1章「ベラ」

この物語の語り手である「私」が、老二等大尉マクシム・マクシームイチから主人公ぺチョーリンの話を聞かされる。マクシームイチのいるN要塞に若い上官ペチョーリンが赴任する。ペチョーリンは、土着の豪族の娘であるベラに心惹かれ、彼女のいたずら好きな弟を利用して強引にベラを手に入れる。ベラを保護するという名目で要塞の中に閉じ込め同棲生活を送る。ペチョーリンは、ベラに毎日贈り物をし、ベラも次第にペチョーリンに心を開いていき愛し合うようになる。しかし、ベラはペチョーリンと同じくベラに恋をしていた土民の青年によりさらわれ命を落としてしまう。

2章「マクシム・マクシームイチ」

ウラジカフカスで足止めを食らった「私」とマクシームイチが再会する。そこになんとペチョーリンも滞在しているということを知り、マクシームイチは、数年ぶりに親友に会えると大喜びするが、ペチョーリンと会うと冷たくあしらわれてしまう。ペチョーリンはロシアからペルシャに去り、その後「私」はいじけたマクシームイチにペチョーリンの手記を貰う。ペチョーリンの手記の前書きでは、ペチョーリンがペルシャからの帰途に死亡したことと「私」が手記を公表しようと思った理由が書かれている。

3章「タマーニ」

たまたま密売人たちの家に宿をとってしまったペチョーリンが密売の現場を目撃し、密売人の女に殺されそうになる。

4章「公爵令嬢メリー」

温泉地ピチャゴールスクへ保養のために来たペチョーリンが、かつても友人であり、足に負った怪我の保養出来たグルシニッキーと再開する。グルシニッキーは、そのときちょうどモスクワから来ていた公爵令嬢メリーに恋をしていた。ペチョーリンは、メリーに対して一見冷淡な態度を見せながら彼女の心を征服してしまう。怒ったグルシニッキーは卑怯なトリックを用いてペチョーリンに決闘を申し込むが、裏をかかれて命を落としてしまう。その真相に感づいた当局によりペチョーリンはN要塞に転勤になり、メリーに別れを告げた。

5章「運命論者」

ペチョーリンが戦線の左翼にあるコサック村に滞在した際、将校たちは運命が存在するのかについても議論で盛り上がる。賭博が好きな将校ヴーリチに対してペチョーリンが、「君はもうすぐ死にますよ」と予言するとヴーリチは帰り道で酔っ払ったコサックに切られ本当に死んでしまう。ペチョーリンは引き籠った犯人を命がけで生け捕りにする。

 

特徴・文学史上の意義

この作品の主人公ペチョーリンの名は、ウラル山脈に源を発するペチョラ川に由来していて、この命名プーシキンの「オネーギン」を意識しているとされています。オネーギンの名前はオネガ川から取られています(光文社「現代の英雄」P.27)。また、作者は彼を「精神の不具者」、「われわれの世代の諸欠点のポートレート」と呼んでおり、ペチョーリンは「オネーギン」の主人公と繋がる余計者であるといえます。

 

この作品は、発表された当時からとても評価が高く多くの研究がなされてきました。その中で例を挙げるとまず視点の問題があります。

第1章ではマクシム・マクシームイチお語りが中心となり、第2章のペチョーリンの手記の部分ではペチョーリンの語りになります。また、自称旅行作家の「私」の語りが所々で入ります。

前半のマクシームイチの語りでは、「じつに好青年でした、まちがいなく。ただ、少々変わっていましたね。たとえば、雨の日や寒い日に一日中狩りに出て、みんな凍えてぐったりしているのに、ところがこの男だけはなんともない。そうかと思えば、部屋のなかにひきこもって、ちょっと風が吹いただけで、風邪を引いたなどと言い立てる。鎧戸ががたがたいうと、ぶるぶる震え出して、血の気がひいてくるんです。」(光文社p.26)というようにペチョーリンが捉え所のない変わり者であることが述べられています。

また、ウラジカフカスで、ペチョーリンとマクシームイチが再開する場面では、ペチョーリンがとても冷酷な人間であるという印象を読者に与えていますが、ペチョーリンの手記では、冒頭部分「タマーニ」で泳げないという欠点が描かれているなど、読者はペチョーリンの人間らしい一面を知ることになります。手記を読めば先程の記述もペチョーリンは己のうちに引きこもって、過去のできごとを憤怒や悔恨とともに思い出していると見ることができるのです。

 

他にも、ペチョーリンの変わった性格造形や登場人物たちの演劇性、ペチョーリンの反逆性などについても多くの研究がなされています。(長い文を書くのは苦手なので省きます)

 

感想

僕は、光文社の高橋知之訳を読んだのですが、とても読みやすかったし面白かったです。

まるで掴みどころがなくて令嬢たちを虜にしちゃうペチョーリンかっこいいですね!社交界とかも参加してみたいです‬!

あと情景描写も綺麗でこれ読んでコーカサス地方に旅行に行きたくなりました!この作品とは関係ないですけどアゼルバイジャンの首都バクーとか楽しそうですよ

 

 

 

白石聖を推してます